幼い頃の交通事故で家族を一度に失い、事故の後遺症で痛みを感じなくなった男、ナムスン。痛覚だけでなく味覚や皮膚感覚もなく、涙を流すこともない。少年院で知り合った兄貴分ボンノの使い走りとして借金の取り立てをしながら、毎日を無気力に生きていた。

そんなある日、ナムスンは取り立て先でドンヒョンという女と出会う。ドンヒョンは道端で手作りのアクセサリーを売って、死んだ父親の借金を返していた。ナムスンの脅しにも怖じ気づくことなく、逆に喰ってかかるドンヒョンに不思議な感情を抱き始めるナムスン。一方、ドンヒョンもいつも傷だらけのナムスンを痛々しい思いで見つめるようになる。

やがて、ナムスンは行くあてのないドンヒョンを自分の家に連れてくる。同居を始めたふたりは、時にいがみ合いながらも次第に距離を縮めていく。ドンヒョンはナムスンの事故のいきさつを、ナムスンはドンヒョンがわずかな痛みや出血が致命傷になる血友病患者だと知る。二人は互いの“痛み” を知って相手への愛を深めていく。

ナムスンが生きる喜びを感じ始めた頃、ドンヒョンの病気が悪化し高額の治療費が必要になる。自分のために苦しむナムスンを見て、ドンヒョンは「私を自由にして」と別れを告げるのだった。 同じ頃、ボンノは妻が多額の借金をした組織の会長から危険な仕事を強要される。それは彼が請け負った再開発事業に反対する住民側や世間を黙らせるために犠牲者を出せ、というものだった。ナムスンはボンノの「必ず助ける」という言葉を背に、殺気立った住民のデモ隊が占拠しているビルの屋上へと向かう……。